一歩、その先へ
実際に体験したお客様からのメッセージ
いま、伝えたいこと。
～五島列島4泊5日の旅を終えて～
山田さんが脳梗塞を発症したのは、今から約2年前。
最初の1年間で懸命にリハビリを続け、
傷病後2年目で職場復帰を果たしている。
それでも、左半身に残る麻痺と車いす生活。
こんな身体じゃダメだ。
車いすじゃ何もできない。
人間不信にも陥り、人生のどん底に居た。
そんな中、
亡くなった山田さんのお父さんの生まれ故郷に、
行きたくなった。
ご先祖のお墓を、見に行きたくなった。
山田さんが今、住んでいるのは愛知県。
お父さんの生まれ故郷は、長崎県の五島列島。
五島に、親戚がいるのか知らない。
お墓がある場所も分からない。
それよりも何よりも、
自分自身が、車いすで五島列島まで行けるのか、
わからなかった。自信がなかった。
無い無いづくしだ。
でも、行きたい。
手探り状態で情報を集めはじめた。
五島の町役場に電話して事情を話すと、
山田さんのお父さんのことを知っている人とつながった。
さらにその人が、山田さんの親戚にあたる伯母さんに
つないでくれた。
五島のことが少しだけ見えてきた。
次は、どうやって五島まで行くか。
そもそも行けるのか。
障がい者の旅行をサポートしてくれる会社がないか、調べた。
そして、「あんしんトラベル」に出逢った。
あんしんトラベルのスタッフに、
日程、
五島でやりたいこと、
行きたい場所、
食べたいもの、
サポートして欲しい内容、
自分の想いを伝えた。
旅行当日を迎えた。
愛知県から長崎県（五島）まで、4泊5日の旅。
あんしんトラベルから、介護職の女性スタッフが付き添う。
自然豊かな島、五島列島・青方。
バリアフリーではない建物もたくさんある。
世界遺産の教会に来た。
目の前に立ちはだかる階段。
山田さん
「あー。これは無理だ。」と思った。
付添スタッフが、
「階段でも車いすのまま上がれるんですよ^^」と伝えるも、
山田さんの中で、画像としてイメージ出来ず、
「無理むり」と言う。
付添スタッフ１人でも、”てこの原理”を使いながら
階段を車いす介助で昇り降りできるが、
ここは、山田さんにより安心してもらえるよう、
「すみませーん。」と、
近くの人に声をかけた。
そしたら、山田さんとスタッフのもとへ
数人の男性が集まってきて、
車いすでの階段昇降を軽々と手伝ってくれた。
車いすごと抱えるのではない。
昇り階段の手前。
山田さんは、車いすごと後ろ向きになる。
スタッフが、山田さんの背後で車いすをウィリーし、
集まってきてくれた男性たちが、
山田さんの足元を（持ち上げず）支えながら、
みんなでゆっくりと階段を昇っていく。
階段をぜんぶ昇りきったところで、
世界遺産の教会を堪能した。
「神様の存在は信じてなかったけど、
ここ（教会）に居ると、不思議と心が落ちついて、
これから先、
こんな身体でも、
困難なことがあっても乗り越えられる。」
そう思えた。
勇気が湧いてきた。
昇ってきた階段を今度は、反対向きで
みんなでゆっくりと、山田さんを支えながら降りた。
協力してくれた地元の男性たちも、
「へぇ～、車いすで階段って昇り降りできるんですね～！」
「勉強になりました～！」と驚く。
山田さんは、
今までに自分が「絶対に無理」と思っていたことが
意外にあっさり「できた」ことに、驚きと感動をかくせない。
今まで都会的な遊びしか知らなかった。
生まれ初めてみる
蛍の幻想的な風景。
五島の豊かな自然に
心も身体も、生まれ変わったようだ。
「自然の美しさに、自分自身こんなに感動するなんて・・。」
新しい自分に出逢えた喜びが、山田さんから伝わってくる。
4泊5日の旅も終わりに近づき、
飛行機で愛知県に帰るため、
五島からフェリーでいったん福岡に入る。
福岡市内では、
以前から行きたかった屋台へ行き、2階建ての観光バスにも乗った。
2階建ての観光バスは、
地上から車いすのままリフトに乗り、
リフトが電動で2階の座席車輌まで上げてくれる。
これもまた、
話や写真で見るだけではなかなかイメージが湧かなかった。
ところが、実際に体験してみると、
「ぼくは今までにこんなに感動したことは無いですよ！！」
と山田さん。
「迷惑かけるし・・」「知らない人に頼みづらいし・・」等と
ついつい思いがちだが、
「あの」とか「すみません」と、ひと声かけてみたら
意外にあっさりとサポートしてもらえる。
（協力した側にも得るものがある）
そしてその、少しのサポートがあれば、
行きたいところに行けて、食べたいものを食べることができる。
会いたい人に、会うことができる。
山田さんの可能性が広がり、世界がひろがっていく。
もしかすると、山田さんとのご縁は、
山田さんのお父さん、ご先祖さまの導きだったのかもしれない。
【文責】
あんしんトラベル
高木 笑美